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美杉会グループ

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疾患とその治療法について

前立腺がんについて

 前立腺がんは、50歳を越えた男性にみられる悪性腫瘍で、近年、その患者数・死亡数は、増加傾向が続いています。特に死亡数の増加率は、全てのがんのなかで第1位となっています。
 前立腺がんは、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れがちになってしまい、症状が出てきたときには、病気はかなり進行しているという怖い病気です。しかし、早期に発見すれば完全に治すことも可能で、治療前と変わらない生活を送ることができます。従って、早期発見のために、50歳を越えた方には前立腺がん特異抗原(PSA)の検査をお勧めしています。
 この検査は、一般の血液検査と同じですので、患者さんの体への負担も少なく済みます。前述しましたが、当院では前立腺がん治療の全ての選択枝を行うことが可能です。従って、患者さんの体の状態に合わせた治療を行うことができます。

前立腺がんを内視鏡(腹腔鏡手術)で切除しています
-手術時間はおおよそ2時間以内-

3Dカメラシステムのイメージ図

 当院では、2015年1月より、常勤専門医が2名となったことから、従来、開腹手術で行っていた前立腺全摘術を腹腔鏡手術に切り替えました。腹腔鏡下に前立腺全摘術を行う際、技術的に最も難易度が高いのは、膀胱と前立腺間の切離及び前立腺摘出後の膀胱尿道吻合です。この時に絶大な威力を発揮するのが3Dカメラシステムです。正確な剥離、正確な運針が可能となり、手術精度が上がることにより、術後の患者さんのQOL(尿禁制の早期回復、性機能温存)が向上します。また手術時間が短縮されます。手術時間は1時間半~2時間程度です。
 当科で行っている術式は、腹膜外アプローチで、手術中の患者さんの体位は仰臥位(自然に仰向けで寝た状態)で行うことが出来、頭を下げた頭低位にする必要はありません。従って、心臓、呼吸機能に問題があったり、緑内障等で眼圧が高い様な場合でも、問題なく手術を行うことが可能です。術時に設置するポート(腹腔鏡手術に使用する紺子類を出し入れする筒のようなもの)はカメラポート、10mmポート、5mmポート2本の計4本で済みます。

 ◆3D内視鏡システム

3D観察により、対象臓器の奥行き感の把握を容易し、より迅速で正確に処置いたします。

 ◆外科手術用3Dビデオスコープ


世界初の先端湾曲機能を搭載しており、あらゆる角度から観察が可能で外科作業を補助します。

 ◆万能手術台アルファマックス

縦方向のスライド等汎用性を備えた手術台で、3D内視鏡システムと併せて使用し、尿管結石手術や腎結石手術等に活躍します。

前立腺がんを有効なIMRT(強度変調放射線治療)を行っています

高精度放射線治療装置ノバリスTx

 IMRTは前立腺がんを手術なしに治す強度変調放射線治療です。正常な組織への放射線量を抑え、腫瘍への線量を増加することで、身体に優しい治療が可能です。
 下図は放射線分量図です。青いラインが処方線量の90%を示し、直腸の線量が低減されているのがわかります。

 

放射線量分布図
通常照射の画像
IMRTの画像

前立腺がんに有効なIMRTについて

 

IMRTについてのQ&A

Q.IMRTってどんなことをするの?
A.IMRTとは、最新のテクノロジーを駆使して照射野内の放射線強度を変化(変調)させて行う治療法です。腫瘍に十分な線量を投与しつつ、正常組織への線量を抑えるような線量分布を作成することが可能です。

Q.放射線治療は痛くないの?
A.放射線を照射することによる痛みは絶対にありません。ただし治療の回数を重ねていくと副作用として皮膚の反応や粘膜の反応により痛みを伴うことがあります。詳しくは、放射線治療担当医にお尋ねください。

Q.重篤な副作用はないの?
A.放射線治療の副作用は、急性期(治療中や終了直後)に発生するものと、晩発生(終了後半年から数年後)の2種類に大別されます。前立腺IMRTの場合問題となるのは、晩期に発生する直腸出血と言われていますが、通常の放射線療法と比較するとその発生率は、17%から2%以下に減ったと言われています。

前立腺肥大症について

 前立腺肥大症は、初老期以降の男性に起こる疾患です。男性には、膀胱のすぐ下にクルミ大の前立腺という臓器があり、精液の一部を作っています。
 この前立腺の真ん中を尿道が走っていますが、加齢に伴い、前立腺の肥大が起こってくると、排尿障害が出現することがあります。
 前立腺肥大症の治療は、大きく分けると、薬物療法と手術療法があります。薬物療法によく反応して、排尿状態が改善する場合もありますが、あまり薬に反応せず、排尿困難が進行する場合もあります。この様な場合には、手術療法が適応となります。
 手術療法に関しては、開腹手術と非開腹手術に分けられますが、非開腹手術のなかで、ゴールドスタンダードとなっているのが、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)です。この手術は、簡単に言うと、尿道から切除鏡という手術用の内視鏡を挿入して、腫れた前立腺を削る手術です。この手術の問題点は、大きな前立腺(腺腫)を削ろうとすると、手術に時間がかかってしまい、灌流液の体内への吸収により、水中毒をおこすという点でした。そのため、開腹手術とTUR-Pのどちらを選択するかの基準として、教科書的には、前立腺重量が50g程度以下ならTUR-Pを、それ以上では、開腹手術を選択するというのが一般的でした。
 最近、当院では、従来のTUR-Pではなく、ホルミウムヤグレーザーを使用した前立腺核出術(HoLEP)を施行しています。この手術では、灌流液として生理食塩水(電解質溶液)を使用しますので、水中毒が起こらないだけでなく、大きな腺腫でも少ない出血量で、完全に核出できるというメリットがあります。HoLEPにより、100gを超える大きな前立腺に対しても、安全に手術が施行できるようになりました。その結果、当院においては、前立腺肥大症に対する開腹手術は過去のものとなっています。
 近ごろ、排尿の勢いがなくなってきた、残尿感がある、排尿に時間がかかる、夜間のトイレの回数が増えてきたなどの症状がある方、「年のせい」と諦めていませんか? 一度、当院にご相談ください。

レーザーで前立腺肥大症に核出術や、結石破砕を行っています
-手術時間は2時間以内-

  これまでに多くの医療用レーザーが開発されてきました。レーザーの特長は、優れた切開蒸散能力で、術中出血の少ない手術が可能な点です。レーザーの種類により、その波長が何種類かあり、水(生体の主要な構成成分は水です)、赤血球中のヘモグロビン等の生体組織への吸収の度合い、到達深度が異なります。
 泌尿器科領域で現在主に使用されるレーザーは、ホルミウムヤグレーザー(Ho:YAG)と呼ばれ、波長2100nmのものです。Ho:YAGは、水に強く吸収されるため、全ての生体組織において優れた切開蒸散能力が発揮され、組織への到達深度が浅いという特長があります。到達深度が浅いということは、周りの組織に傷害を与えることが少ないことを意味します。
 この性質を利用して、前立腺肥大症に対して経尿道的な前立腺腺腫核出術(HoLEP)が行われるようになって来ました。従来の標準的な経尿道的前立腺切除術(TUR-P)に比較して、圧倒的に少ない出血量、完全な腺腫の核出を実現し、より低侵襲な手術が可能となっています。
 当院では、2014年7月より、Boston Scientific社製のバーサパルスレーザーを導入し良好な成績を収めています。また、Ho:YAGは、尿路結石の治療にも応用することが可能で、詳細は省きますが、従来の砕石装置に比較して幾つかの点で優れています。結石自体に水は存在しませんが、結石周囲の灌流液(水)に吸収される際に発生する衝撃波によって、結石が破砕されるものと考えられています。従って、あらゆる種類の尿路結石を破砕することが可能であり、灌流液に吸収されるため誤照射による組織傷害の可能性も少なく、尿路結石破砕術に適したデバイスとなっています。

バーサパルスレーザーによる前立腺肥大治療イメージ

肥大した前立腺の内腺と外腺の境目にホルミウム・ヤグレーザーを照射し、内腺のみをくりぬくように核出します。

 

核出した内腺を、膀胱内に移動させます。

前立腺組織をすべて膀胱内に移動させた後、モーセレーターという機器を用い、前立腺組織を細かく切断しながら吸引し、体外に排出します。

前立腺肥大症に対する最新のレーザー治療のご案内