vol.3
がんの放射線治療の手順
がんの放射線治療の手順
さて、放射線治療はどのような治療の手順で行うのでしょうか。ほとんどの方は初めてですのでドキドキしてしまいますよね。放射線治療の手順は
- 診察と説明
- 治療計画CT
- コンピュータによる治療計画と計画の確認
- 実際の治療
です。
診察と説明
1-1 診察
主治医からのお手紙や、事前に行う多くの医師やそれ以外の医療スタッフとの検討会(キャンサーボードとかカンファレンスとかと呼ばれます。)の結果に基づいて患者さんの診察を行います。診察は普通の内科や外科の外来と同じです。
1-2 説明と同意
放射線治療ができそうだとなったら、次に患者さん、ご家族への説明です。
この時に、こんなことを聞いたら医師に失礼ではないかと思われる患者さんがいらっしゃるようですが、そのようなことはありません。当然、患者さんのはじめての話ですので、わからないことだらけのはずです。ぜひ、質問してください。
2 治療計画CT (体を輪切りにしてみる放射線検査)
治療を始める前に、放射線を照射する部位を正確に決めるため、治療計画用のCTを撮影します。時間は30分くらいです。
治療用のCTでは、放射線治療をするのと全く同じ姿勢でCTを撮影します。放射線治療を行うときと同じで普通に呼吸をしながら撮影する場合と、息を吸った状態や、はいた状態で止めていただいて撮影する場合があります。また、呼吸の状態を把握するために胸やお腹に小さな目印や器具をつけて撮影することもあります。撮影が終わると、体に消えにくいインクやシールで印をつけます。CTから光が出てCTの基準点を示すので、その部分に印をつけています。印は通常、体の前と左右についています。
患者さんの動きを小さくするためにシェルというお面のようなものや、全身を固定する道具を使用することもあります。
3 コンピュータによる治療計画と計画の確認
撮影したCT画像をもとに、治療計画装置と呼ばれるコンピュータを用いて詳細な治療計画を作成します。目的とする部位のみに必要な放射線を当てるためには、どの方向からどのような方法で放射線を照射したらよいかの計算を行います。この作業計算には通常1~7日程度かかります。
4 実際の放射線治療
部屋の真ん中に大きな機械がおいてあります。テレビモニターも何台か周りにあります。なんとなく怖い感じがしますが、安心してください。
技師がお名前を確認したのち、治療装置のベッドの上にご案内します。頭やのどの場合はそのままのことがおおく、胸や腹部の時はガウンに着替えていただくことがおおいです。ですから、着替えやすい服装でお願いします。ボディスーツやワンピースはできれば避けていただいたほうがよいと思います。CT撮影時に作成したお面(シェル)や固定具を使用して動かないようにしていただきます。
部屋が暗くなるとブルーまたは赤い光が上と横から出てきます。この光と体の印とを合わせることで、体の位置を決められた場所へ移動します。この状態で治療することもありますが、さらにX線写真やCTを撮影して位置を確認します。
次に実際の放射線照射が始まります。一方向に5秒から30秒くらいの治療です。あるいは機械が体のまわりを30秒から1分くらいで一周しながら照射する方法もあります。照射時は通常は普通に呼吸をしていただきますが、必要によっては呼吸を止めていただくこともあります。1回に掛かる時間は、放射線治療の部屋に入ってから出るまでに10分から15分ですが、特殊な治療では30分くらいかかることもあります。
なお、最初の治療時に、今度は放射線治療のマークになるしるしをお体に書き入れます。マークは放射線を当てる部位を正確に決める大切なものです。毎回の治療の位置はこの線で確認しますので、消さないようしましょう。もちろん、消えにくいインクで画いていますので、無理に消さなければ消えないと思います。ただ、消えやすい方もいらっしゃいます。万一、印がうすくなったり、にじんで消えかかっても,ご自身では描きたしたりせず、かならず担当者にお知らせいただき、治療する体位で描きたす必要があります。
これで終わりです。
この治療を毎日、月曜日から金曜日まで週5回必要な回数を行います。放射線治療中は、病気がちゃんと治って行くか、副作用は出ていないかなど診るために週1回以上の診察があります。なにかあれば遠慮しないでおっしゃってください。それ以外でも、心配なことがあればスタッフにお知らせください。治療終了後も定期的に診察があります。
笹井 啓資(元 放射線治療センター長)