vol.2
がんの放射線治療とはこんな治療です
がんの放射線治療とはこんな治療です
放射線療法とは、がん細胞の中にあって、がん細胞の設計図が書かれているDNAに放射線を大量に当てて、設計図を破壊することでがんの治療をする方法です。設計図が壊れるので、がんは増えることができなくなり死んでしまいます。通常は2グレイ(グレイは放射線の量を測る単位です。記号はGy)程度を1日1回 週5回、合計で20回から35回くらい連続で照射します。1回にかかる時間は15分くらいで、そのうち機械が動くのは1分から2分です。病状によっては1回で治療を終了することもあります。
治療装置は写真のように大掛かりな装置ですが、ベッドの上で静かに横になっていれば、機械が勝手に動いて治療が終わります。直接機械が体に触れることもなく、照射中は何も感じません。
通常は、胸のエックス線写真を撮るのと同じX線を使用します。放射線治療の最大の特徴は、がんができた臓器にX線を集中し、その周辺の臓器の形や働きを保ったままでがんの治療ができることです。もちろん体への負担も小さいのです。
X線は紫外線の仲間ですから、照射により体に起こる現象は日焼けの原因の紫外線とよく似ています。紫外線が皮膚に当たると日焼けします。5分くらい日に当たっても何も起きませんが、時間が長くなると肌の色が赤くなり、やがて黒くなります。ひどいときには水ぶくれができたり、皮がむけたりします。X線による現象もこれによく似ています。
紫外線による炎症は皮膚だけですが、X線は体を通過するので通過した臓器にも日焼けに似た症状が起きます。照射回数が多くなればなるほど症状が出てきますが、日焼けと同様に治療後時間がたつと治ります。
ただ、時間がたってから出てくる副作用もあります。ちょうど、日焼けのあとにできるシミみたいなものです。シミができるとなかなか治りませんが、放射線治療後数か月以上過ぎてから起こる副作用もなかなか治りません。この副作用は放射線の照射量が多いと起こります。ですから私たちは通常、この副作用を起こさないように放射線量を調整しながら治療をしています。
以前からのどや舌のがんなど周囲に大事な臓器がない部分のがんは治せたのですが、お腹の中などの治療はなかなか難しいものでした。それは、がんの近くに大事な臓器があるため、その臓器にも放射線が当たることを避けて必要量の放射線を患部に照射することができなかったからです。
最近は、コンピュータ技術や精密機械技術が進歩したことにより、ピンポイントでがんのみに放射線を照射することができるようになりました。このことにより、治療成績が画期的に向上しています。佐藤病院にあるノバリスTXという治療装置はこの最先端の治療が可能な装置です。
笹井 啓資(元 放射線治療センター長)