Vol.3
食物繊維は足りてますか?~効果的な摂り方~
食物繊維とは?
「ヒトの消化酵素で分解されない食物中の総体」と定義されています。
食物繊維は、人間の消化酵素では分解することができない、食べ物に含まれている成分です。
食物繊維の多くは、単糖がたくさん結合した多糖類の仲間ですが、消化されないため、エネルギー源にはなりません。水に溶ける水溶性食物繊維と、溶けない不溶性食物繊維とに大別されます。かつては、便通をよくする成分くらいにしか見られていませんでしたが、長年の研究によって食物繊維の健康への有効性が次々に明らかになり、現代ではさまざまな病気の予防に役立つ重要な栄養素として認められています。
食物繊維の性質と働き
水溶性食物繊維も不溶性食物繊維もどちらも体内には吸収されませんが、健康のためには重要な役割を果たしており、第六の栄養素ともいわれ注目されています。どちらの食物繊維も大腸内の細菌により発酵・分解され、ビフィズス菌などの善玉腸内細菌の餌になるため、善玉菌が増え、腸内環境が改善されます。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は、水に溶けてゲル状になる性質があるため、便を柔らかくして排泄を促したり、栄養素(特に糖質)の吸収を緩やかにしてくれます。また、腸内で「善玉菌」のエサとなって、善玉菌を増やす効果も期待できます。腸内には、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」が存在しますが、日和見菌は善玉菌にも悪玉菌にも変化するため、なるべく善玉菌を増やしてバランスを保つことが重要です。
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は水に溶けない性質があるため、水分を吸収して膨らむことで腸管を刺激し、大腸のぜん動運動を促すことで排便をアシストしてくれます。また、便のカサを増やして排泄しやすくしてくれる効果も期待できます。
食物繊維の重要性について
1950年代になって当時西欧に多く発症していた、糖尿病や心疾患、肥満などの非感染性疾患の予防や治療に、食物繊維が重要であることの研究が、英国などにおいて発表されるようになりました。現在では、食物繊維を十分に摂取することによって、
- 咀嚼回数が増す。
- 消化管運動が活発化する。
- 腸内残渣物の腸内通過時間の短縮が図れる。
- 糖質や脂質などの消化吸収を低下させる。
- 腸肝循環する胆汁酸を減少させる。
- 腸内細菌叢を良好にさせる。
- 便容量を増大させる。
- 腸内圧および腹圧を低下させる。
- 腸内細菌によるビタミンの合成に役立つ
などの作用があることが分かり、これらの働きが健康の維持と疾病の予防に大きく関わっていることが分かってきました。中でも、動脈硬化症、虚血性心疾患、腸疾患(大腸がんなど)、脂質異常症、糖尿病、肥満、コレステロ-ル胆石症などの疾病は、食物繊維の不足が深く関わっていることが明らかになり、生活習慣病の予防や治療には、食物繊維を十分に摂取することが重要とされています。
食物繊維摂取量の推移
日本人の食物繊維摂取量は減ってきており、 1950年代 の21gに比べ、1970年ころには15gとたった20年で5gマイナスとなりました。食物繊維摂取量の内訳を見ると、近年特に穀類からの割合が減っていることが分かります。その理由として食生活の欧米化で肉や乳製品の摂取が増え、米の摂取量が減ったことと大麦などの雑穀を食べなくなったことがあります。
1955年(昭和30年)代後半までの私たちの食事は、主食としてご飯を中心に魚介類と、いもや野菜の煮物、みそ汁、漬け物などで構成されていました。このような食事であれば、特に注意しなくても食物繊維は20グラム以上の十分な量が取れていました。しかし、現代の食事パタ-ンは、コッテリとした洋風パタ-ンへと変化し、肉類の増加(動物性たんぱく質、動物性脂肪の増加)、清涼飲料や菓子類をはじめとする砂糖の増加と、米の摂取量の減少が目立ち、食物繊維の摂取量は15グラム程度へと大幅に減少しました。
その結果、日本人には縁の薄かった大腸がんやさまざまな生活習慣病が増加しています。また、腸内の有害細菌の増加による免疫能低下なども指摘されています。
食物繊維の年代別摂取量と摂取基準
私たちに必要な食物繊維の摂取量はいったいどのくらいでしょうか? 下のグラフは年代ごとの食物繊維の摂取量をあらわしています。日本人の食事摂取基準(2015年版)では、食物繊維の目標量は、18~69歳では1日あたり男性20g以上、女性18g以上とされています。
食物繊維が不足するとどうなる?
- 腸内環境の悪化し、便秘になりやすい
- 糖尿病などの生活習慣病のリスクが高くなりやすい
通常の食事では食物繊維の過剰摂取の心配はなく、むしろ、現在の日本人は、食物繊維が不足ぎみなので、意識してとる必要があります。しかし、サプリメントなどの健康食品を利用する際は、飲みすぎるとおなかが緩くなったり、他の栄養素の吸収を妨げたりする可能性があるため、注意が必要です。
サプリメントについて
食物繊維のサプリメントを摂取する目的は、「便秘改善」や「血糖値の急上昇の予防」というものが一般的だと思います。サプリメントは食品と違って過剰摂取してしまう可能性があり、その場合はお腹がゆるくなったり、下痢をしたり、血糖値のコントロールが上手にできずに低血糖となってしまうことがあります。適正量を守り、サプリメントと身体との相性も忘れずに確認してください。
食物繊維を多く含む食品や食物繊維量について
穀類に含まれる食物繊維量
食品名 | 食物繊維(g/可食部100g) | 食材ごとの目安 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
水溶性 | 不溶性 | 総量 | 単位 | 重量(g) | 含有食物 繊維量(g) |
|
こめ | 微量 | 0.6 | 0.6 | - | - | - |
コーンフレーク | 0.3 | 2.1 | 2.4 | - | - | - |
ライ麦パン | 2 | 3.6 | 5.6 | 1個 | 72 | 4.0 |
フランスパン | 1.2 | 1.5 | 2.7 | 1切れ | 30 | 0.8 |
そば(干) | 1.6 | 2.1 | 3.7 | 1人前 | 100 | 3.7 |
中華めん(干) | 1.6 | 1.3 | 2.9 | 1人前 | 73 | 2.1 |
うどん(干) | 0.6 | 1.8 | 2.4 | 1人前 | 100 | 2.4 |
じゃがいも | 0.6 | 0.7 | 1.3 | 1個 | 110 | 1.4 |
野菜に含まれる食物繊維量
食品名 | 食物繊維(g/可食部100g) | 食材ごとの目安 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
水溶性 | 不溶性 | 総量 | 単位 | 重量(g) | 含有食物 繊維量(g) |
|
だいこん(葉) | 0.8 | 3.2 | 4 | - | - | - |
だいこん(根) | 0.5 | 0.9 | 1.4 | - | - | - |
切り干し大根 | 3.6 | 17.1 | 20.7 | 1人前 | 5 | 1.0 |
ごぼう | 2.3 | 3.4 | 5.7 | 1本 | 180 | 10.3 |
かぼちゃ | 0.7 | 2.1 | 2.8 | - | - | - |
えだまめ | 0.4 | 4.6 | 5 | 1さや | 3 | 0.2 |
トマト | 0.3 | 0.7 | 1 | 中1個 | 150 | 1.5 |
青ピーマン | 0.6 | 1.7 | 2.3 | 1個 | 40 | 0.9 |
キャベツ | 0.4 | 1.4 | 1.8 | - | - | - |
はくさい | 0.3 | 1 | 1.3 | 中1枚 | 150 | 2.0 |
ほうれんそう | 0.7 | 2.1 | 2.8 | 1/3束 | 90 | 2.3 |
グリーンピース | 0.6 | 7.1 | 7.7 | 大さじ | 10 | 0.8 |
きのこに含まれる食物繊維量
食品名 | 食物繊維 (g/可食部100g) | 食材ごとの目安 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
水溶性 | 不溶性 | 総量 | 単位 | 重量(g) | 含有食物 繊維量(g) |
|
きくらげ(乾) | 0 | 57.4 | 57.4 | - | - | - |
干ししいたけ | 3 | 38 | 41 | - | - | - |
しいたけ | 0.5 | 3 | 3.5 | 1個 | 15 | 0.5 |
なめこ | 1 | 2.3 | 3.3 | 1パック | 100 | 3.3 |
本しめじ | 0.7 | 2.6 | 3.3 | 1パック | 100 | 3.3 |
果物に含まれる食物繊維量
食品名 | 食物繊維(g/可食部100g) | 食材ごとの目安 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
水溶性 | 不溶性 | 総量 | 単位 | 重量(g) | 含有食物 繊維量(g) |
|
干しがき | 1.3 | 12.7 | 14 | 1個 | 30 | 4.2 |
干しプルーン | 3.4 | 3.8 | 7.2 | 1個 | 10 | 0.7 |
アボガド | 1.7 | 3.6 | 5.3 | 1個 | 230 | 12.2 |
バナナ | 0.1 | 1 | 1.1 | 1本 | 150 | 1.7 |
りんご | 0.3 | 1.2 | 1.5 | 1個 | 300 | 4.5 |
なし | 0.2 | 0.7 | 0.9 | 1個 | 300 | 2.7 |
すいか | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 1/16個 | 400 | 1.2 |
いちご | 0.5 | 0.9 | 1.4 | 1個 | 20 | 0.3 |
豆類に含まれる食物繊維量
食品名 | 食物繊維(g/可食部100g) | 食材ごとの目安 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
水溶性 | 不溶性 | 総量 | 単位 | 重量(g) | 含有食物 繊維量(g) |
|
いんげん豆(乾) | 3.3 | 16 | 19.3 | 1人前 | 25 | 4.8 |
えんどう(乾) | 1.2 | 16.2 | 17.4 | 1人前 | 25 | 4.4 |
大豆(国産、乾) | 1.8 | 15.3 | 17.1 | 1人前 | 25 | 4.3 |
きなこ | 1.9 | 15 | 16.9 | 大さじ1 | 6 | 1.0 |
あずき こしあん | 0.3 | 6.5 | 6.8 | - | - | - |
納豆 | 2 | 3.9 | 5.9 | 1パック | 50 | 3.0 |
絹ごし豆腐 | 0.1 | 0.2 | 0.3 | 1丁 | 200~300 | 0.6~0.9 |
木綿豆腐 | 0.1 | 0.3 | 0.4 | 1丁 | 200~300 | 0.8~1.2 |
凍り豆腐 | 0.6 | 1.2 | 1.8 | 1個 | 19 | 0.3 |
海藻に含まれる食物繊維量
食品名 | 食物繊維 (g/可食部100g) | 食材ごとの目安 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
水溶性 | 不溶性 | 総量 | 単位 | 重量(g) | 含有食物 繊維量(g) |
|
ひじき(乾) | - | - | 43.3 | 小鉢 | 5 | 2.2 |
焼きのり | - | - | 36 | 1枚 | 3 | 1.1 |
わかめ(乾) | - | - | 32.7 | 1g | 1 | 0.3 |
もずく | - | - | 1.4 | 小鉢 | 30 | 0.4 |
昆布(乾) | - | - | 27.1 | 5cm角 | 1 | 0.3 |