vol.10
前立腺がん放射線治療後の頻尿
前立腺がん放射線治療後の頻尿
今週、前立腺がん放射線治療後の定期診察にお出でになった患者さんとお話していましたら、「調子は良いのですが、水道の蛇口をみると尿意が起こって困ります。何とかなりませんか」とのご質問をいただきました。前回、ケーゲル体操について書きました。尿意はかなり精神的な面があります。実は、水道の蛇口を見たり水の音を聞いたりすると無性に尿意が起こってしまうという方がかなりいらっしゃいます。
この原因ははっきりとはわかっていませんが、一つの説明として条件反射だとするものです。覚えていらっしゃいますか。昔、パブロフという人が犬に音を聞かせながら餌を与えたら、餌が無くても音を聞かせただけでよだれを流したという実験です。幼少期から水音や蛇口により知らず知らずに排尿が条件づけられているのかもしれません。欧米では幼児に水の流れる音を聞かせながら排尿訓練を行ったり、排尿困難な成人のリハビリテーションでも水音を聞きながらするものもあるようです。ただ、水洗トイレが普及していない国でも同じようが現象があるそうですので、別の理由があるのかもしれません。 この尿意をどのように解決したらよいのでしょうか。以下は患者さんから教えていただいたことなので、全員に当てはまるかどうかはわかりませんが、試してみる価値があるのではないかと思います。
その患者さんは朝歯磨き洗面をしようとして水道の蛇口を見ると、むしょうに尿意が起こってしまって困っていたそうです。「これは条件反射だ」と思って、歯磨き洗面をする前に排尿を済ませてみました。蛇口を見るとやはり尿意が起こるのですが、「いま出したばかりだから絶対に出ない」と自分に言い聞かせて毎朝がまんされたそうです。そのうち、蛇口を見ても尿意が起こらなくなったとのことでした。
私は、このお話を伺ってとても感心し、同じような症状のある患者さんにお勧めしています。
笹井 啓資(元 放射線治療センター長)